多くのダブテイルログハウスには、意図的にログ同士の間に隙間が設けられていますが、それにはいくつかの理由がありますので説明いたします。
Why do dovetail log homes have gaps between the logs?

ダブテイルログハウスは、アメリカ東部、なかでも初期のヨーロッパ系入植者が多く定住し、伝統的な木造建築の文化が根付いた地域で多く見られます。一方、いわゆる一般的な丸太小屋(ログハウス)は、西部開拓時代に入植者たちによって多く建てられました。
この二つのタイプのログハウスには、明確な違いが存在します。主に異なるのは、使用されるログの形状(角材か丸太か)と、ログ同士の間に設けられる隙間の有無です。
特にアパラチア山脈周辺に見られるダブテイルログハウスでは、ログとログの間に意図的に広めのスペースが設けられており、そこにはきちんとした理由があります。
木材の動きへの対応
木材は自然素材であるため、周囲の湿度や気温の変化に敏感に反応し、季節や天候によってわずかに膨張したり収縮したりする性質を持っています。こうした木の呼吸ともいえるような動きは避けられないものであり、長く使用される構造物においては、その変化を前提とした設計が必要となります。
そのため、ダブテイルログハウスではログ同士の間にあらかじめ隙間を確保することで、木材が湿度や温度の変化によって動いた際にも、無理な力が加わることなく、建物全体に与える影響を最小限に抑える工夫がなされています。
将来的なセトリング対策にも
ログ材は経年とともに乾燥して収縮して縮んでいきます。その結果、ログ壁全体が少しずつ下がっていく現象が起こり、これを「セトリング(沈み込み)」と呼びます。特に壁の最下部にあるログ材では、この沈み込みが元の高さの最大6%に達することがあるとされています。このセトリングを見越して、最初から隙間を設けてチンキング(弾力性のあるシーラント材で隙間を埋める)することで、ログ材が痩せて隙間が広がっても、シーラント材が隙間を塞ぎ続けてくれる為、断熱性、気密性、そして防虫性を保つことができます。
断熱性能を高める
ログ同士の間に設けられた隙間には、木材よりもはるかに優れた断熱性能を持つ専用の断熱材が入れらるため、壁全体としての断熱性能が大幅に高まります。さらに、断熱性が高まることにより、さまざまな恩恵がもたらされます。
まず、外気の冷たさや夏の熱気が室内に伝わりにくくなるため、季節を問わず快適な室温を保ちやすくなります。冬は暖かく、夏は涼しい住環境が維持され、居住性が向上します。
また、断熱材には音を遮る効果もあるため、外部からの騒音の侵入を抑え、より静かで落ち着いた空間が実現します。
さらに、室内の温度変化が緩やかになることで冷暖房効率が高まり、エアコンや暖房器具の使用を抑えることができるため、光熱費の節約にもつながります。加えて、省エネルギーという観点からも環境にやさしい暮らしを実現することができます。
▼「ログ材の隙間」のまとめ

ログ同士の間に設けられる隙間は、ログ材の膨張・収縮する「木の動き」に対応するためのものであり、また経年による「セトリング(沈み込み)」への備えとしても機能します。さらに、その隙間に断熱材を入れる事で、壁全体の断熱性が大幅に向上。これにより、室温の安定、防音性の向上、冷暖房効率の改善といった効果が得られ、快適で省エネな住環境が実現できるのです。